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――――心の奥に隠れるモノ。 闇 ――――心の奥に潜むモノ。 憎しみ ――――心の奥に光るモノ。 希望 ――――心の奥に宿すモノ。 夢 生き物は、心にすべてを支配され 次第に心の形を変える。 善か悪か。 それ以外の形もあるだろう。 それが世界に光をもたらすのか、闇にもたらすのか。 時代の流れ 因果の道標。 出来すぎた偶然 ありえない奇跡。 積み重なる物語が、この世を支配する。 それは永久に続く、物語…。 これが、俺の話しだ。 ・ ・ ・ ・ ・ ――人間なんて、汚い生物だ。 ガキの頃から、俺は人種のことで非難を受けていた。 人間にはない 獣の耳 猫のような尻尾 縦に細い黒い瞳 ただ、人間に近く、人間ではない存在なのに。 人間の大人達は、俺だけを拒否をしていた。 人間の子供だけが唯一、俺を迎え入れてくれた。 ・・・・迎え入れてくれたはずだった。 「おい、何だよ皆。なんで無視するんだよ!」 暗い空間を走る自分。感覚の世界で、何も周りは見えない。 目の前にある虚像は、多分、大きさから見ると人間の子供達だろう。 そいつらは、白くかたどられ、生きているような気がしなかった。 「待てってば!・・・おい。いきなりなんだよ」 すると、小さい白い影の子供が、恐る恐るに口を開いた。 「だって…お母さんが…。もう君の事、相手しちゃだめって」 次々と、幼い声が頭の中に響いてきた。 「親父は言ってたんだ。お前は人間じゃないって!!人じゃない、獣だって!」 「お兄ちゃん、怖いお化けなの?…やだ、近寄らないで!」 「くるな!ばけもの!いつか僕たちを食べようって思ってるんだろ!」 「山に戻れ!巣に戻れ!」 ばけもの 化け物!! バケモノ!!! あっちいけ! かえれ!!!! 死ね!! コロセ!! 冒険の書 〜記憶のアザ〜 ―――――久しぶりに、夢を見た…。 なんて、寝起きの悪い夢なんだこと…。 まぶしい光に目を慣らせると、風になびく緑の濃い草原が見えた。 空は清清しい蒼を保ち、雲は時間の流れのように悠々と流れる。 仰向けに俺はその空を見ていた。 「はぁあ・・・いい女いねぇかな」 とてつもなく広い青空を見上げた。 この世は広大な空の雲ごとく、大陸には数多の女が存在している。 それを一日中 まぁ…勝手に監視してるのだがな…。 今日も張り切って、女の子監視にいきまっすか! 「おいおい、心の中で何を叫んでるんだい?」 スッと、辺りが影がさしたと思ったら、なんだ、クソユキか。 「誰がクソユキだって?僕はコナユキだけど」 「てめぇはイチイチ心の中覗くなぁぁっ!!」 こいつはコナユキ。俺の昔からの傭兵仲間。まぁ、腐れ縁って奴だ。 女が苦手で、本当に駄目なやつだ。 コナユキは不満そうな顔をして大きな手で頭を掻いた。 「まぁ駄目な奴とかいわないでさ」 「だから覗くなっつの!!」 「・・・んで、よくここが分かったな。何のようだ?」 「アズが何かしようとするとき、いつも此処に居るじゃないか。だから来てみたんだ」 俺は見通された感じが嫌なので、顔をムスッとさせた。 「へいへい、いつも此処に居て悪かったな」 「ごめんごめん、で、話しがあるんだけど…」 「…抽選会?なんでそんなもんに行かなければならんのだ!!帰れ!雪国に帰れ!」 馬鹿らしくなった俺は、その場から逃げようと立ち上がろうとした。 「ちょっと待ちなよ。僕達働いている人にしてくれる抽選会だよ。いろいろ景品とかあるらしいしさ」 賞と聞いて、少し立ち止まってしまったが、こんな幼稚な行事になんて興味はない。 しかし、コナユキは俺の目をジッと見ている。その目から「行こう行こうオーラ」が放っていた。 コイツ…強引に俺を誘おうって魂胆か。 「俺はパスだ。なんだって国の参加行事になんか出ないといけないのだ。アホらしい」 ペッと足元に唾を吐いた。ブーツに唾がかかりそうになり、余計腹が立った。 すると、コナユキが残念そうな声で俺に囁いた。 「そっかぁ〜。残念だね。働く人のための抽選会ってそうそうないのに。 働くって言ったら、そうだね。酒場のお姉さんも居るかも」 ピク…。 「王国の可愛い端女も集うと言うし。あと…」 「道具屋の看板娘アルシャちゃんとか!?笑顔が素敵なパリーヌさんとか!?魔法学校の綺麗な教授シエラさんとか!?」 「い、居るだろうね」 「えくぼが素敵なカンナちゃんも、声がキュートなユリデーテも、皆来るのか!!」 「く、来るだろうね」 ――風の王国 風の王国、その大きさは他の国とも劣らず、環境もそこそこ悪くない。 いろいろな種族が集まり、様々な仕事を持ち、生活をしている。 踊り子の華麗なダンスを観覧できる酒場、話しが好きな子が集まる酒場、恋を求めて女の子が集まる酒場。 なんて素敵なところなんだ。 ここは俺にとって極楽のユートピアみたいなものだ! しかし… コナユキにまんまとはめられた。 見渡す限りの、男、男、男、漢。 どこにも華の香りもしない、人だかり。 道は全て、労働者たちにより埋め尽くされ歩くのもままならない状態だ。 「ゴルァ!コナユキ!!どこに酒場の女が居るんだッ!どこに国の端女がいるんだ!」 半場泣きそうな声で道の真ん中で叫んでみた。しかし、民衆の声でかき消された。 むなしすぎる。 「まだ抽選会場についてないじゃないか。落ち着けアズ…。ん?アズ?」 …灼熱…精霊に望…燃やせ……クソ野郎どもを… 「ま、待つんだ。アズネコ!こんなところで魔法使っちゃ駄目だよ!」 「うっせぇ!こうしねぇと俺のむしゃくしゃは収まらん!!」 右手に激しい魔導素を感じた。心から唸る精霊の念が右手へとかたまる。 コナユキが俺の右手を抑えて、焦るように叫ぶ。 人混みの声のせいで、かすかに聞こえる程度。 「わかったアズ!落ち着いて!この場から離れよう、景色が見えるところ行こうっ」 人混みの中を潜り抜けて、ようやく抽選会場が見渡せる高台にこれた。 空は雲ひとつもなくなっていた。とてもいい天気だ。 しかし俺の心の曇りは一向にも晴れない。 「…もうてめぇの誘いなんかのらねぇからな」 「あはは。今回は運が悪かったね。…でもすごい数だ。こんなに人が集まったのは何年ぶりかな」 コナユキは懐かしそうに昔を思い出し、苦笑いをした。 その笑顔は前からずっと一緒、何も変わらない。 よく、一緒に仕事の依頼を受け、任務を遂行すると決まってこの笑顔を出す。 「なに?僕の顔に何かついてる?」 「…ふん。お前の顔にはお人よしというゴミしか見えない」 ひどいなぁ、と笑い出すコナユキ。 この笑顔にどれくらい呆れたことがあるか。 どれくらい助けられたか。 コナユキとの連携技、魔法剣の習得の時。 幾度となく失敗した日々。 最果ての森でのドラゴン討伐の失敗。 傷を負った二人の影。 ナンパが失敗の連続。 しかし、コナユキは全てその笑顔で助けてくれた。 くえねぇ奴だが、感謝してる。 アホらしい…俺らしくもねぇ。 そのとき、抽選会場でよどめきが聞こえた。 遠くだがベルの音がする。 コナユキがしかめ面をし、不満を述べる。 「あー、なんだろう。遠すぎて何も聞こえないよ」 しかし、俺は聞こえた。 この大きな耳と、この縦長い瞳で、それを捉えた。 好きではない道具ではあるが、こういう時に使える。 「おめでとうっ、嬢ちゃん!特選だよ!!!」 「そうだよっ、特選は『勇者』の称号が風王様から与えられるんだ!」 「・・・ぇ?」 そこには、しょげた尻尾に、垂れた犬耳。 その姿からは何も威厳もない、ただ普通の半獣人。 男か女かもわからない者が目に映った。 だが、俺は何かの虚像を感じた。 心に疼く記憶のアザが何故か衝動に駆られる。 「アズ、何かみえた?」 その言葉も無視し、俺は思い出すように呟く。 「あいつ…どこかで……」 TO BE CONTINUED |