「BGM:山村での初仕事」

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「ねぇ・・・本当にこの先に村なんて・・・あるの?」

うねうねと続く山道をヒィハァ息を切らしながら進む少女が言った。
相当疲れているのかお尻から長く出た尻尾が力無く地面に引きずられている。

「間違いないよ、この地図には確かにこの道の先に村があると記している。
 その村には腕の良い防具職人が居るとアズ・・・知り合いに聞いたんでね。
 ちょっと行ってみたかったんだ。ごめんね」

息一つ切らさず色白の剣士が少女の問いに答える。

「それは構いませんよ。ミノリゴの防御力があがる装備品があればこちらとしても嬉しいですし。
 お金が足りればの話ですが・・・」

と、少し心配そうな白魔導士。

この三人が向かった先でとんでもない事態に巻き込まれるなど
誰が予想していただろう・・・。


『山村での初仕事』


しばらく歩いてようやく着いた頃にはもう夕刻に差し掛かっていた。
森を開拓せず、自然をそのまま利用したような小さな村。
巨木に寄り添うように建てられた原始的な住まいから
そろそろ夕飯の支度をしているのであろう、良い匂いと共に白い煙が漏れている。

「や、やっとついた・・・」
「予定より少し遅くなりましたね・・・泊めてくれる宿があればいいんですが」

今にも呼吸が止まってしまいそうなぐらい息が荒いミノリゴを軽くスルーしてヒビキが今夜泊まる宿を探す。
コナユキは知り合いに聞いた村長の家を見つけて二人に告げる。

「あそこが村長さんの家だと思うから、そこで聞いてみるといいかもしれない」

コナユキの意見に賛同する二人。
夜分遅くすみません、とヒビキが軽くその家のドアをノックする。

「はい、どちらさまで?」
「すみません、旅の者です・・・この村に腕利きの防具職人が居ると聞いてやってきたのですが
 着いた頃にはもう夕刻で・・・今晩どこかに泊めて頂けると助かるのですが」

ふむふむ、と白い髭を蓄えた村長がその髭を撫でながらヒビキの話に耳を傾ける。

「・・・それは困りましたね。
 今この村はモンスターに狙われてまして・・・誰も余所者を入れたがらないのですよ」
「・・・・・え?」

モンスター、という言葉にいち早く反応したコナユキ。思わず声をあげる。

(こんな山奥にも魔王と・・・守護石を奪われた影響が出ているのですね)

顔をこわばらせるヒビキ。

「それなら尚更野宿は危険すぎます。何とか、ならないでしょうか・・・」

村長とヒビキとの間で無言の取り引きが繰り広げられている中、状況が把握出来てないミノリゴは雰囲気に戸惑った。

「あ・・・モ、モンスターが来るってホント?もしホントなら大丈夫?死なない??」

わたわたと落ち着きなくうろたえるミノリゴ。そんな姿がふいに村長の目に止まった。

「・・・貴方、もしや・・・」

そう言って村長はミノリゴに近寄るとまじまじとミノリゴを見た。
びくびくっっと体中の毛を痙攣させておびえるミノリゴ。
その様子を見て剣に手を添えるコナユキ。

「失礼ですが・・・先日風王に選ばれた”勇者”様ではありませんか?」

その言葉にますますドキッとするミノリゴ。
今まで結構な人と会ってきたが、誰もミノリゴが勇者だと気づく者は居なかった。
ミノリゴを護衛してくれると言ってくれたコナユキもその一人だった。
だから余計にこの村長に”勇者”と言われた事は信じ難い事だった。

「ぇ・・・いや、僕・・・その・・・」
「その緑の髪と犬耳、間違いないですよねっ!抽選会の時見たままだ・・・。
 あぁ、こんな所に勇者様が来てくれるなんて・・・守護石のお導きとしか・・・」

そうです、と答えてないのに勇者だって決め付けてる・・・。
もうこれは逃げられないな、と直感でミノリゴは悟った。

「先ほども言ったようにこの村はモンスターに狙われています。
 どうか、それを退治していただけないでしょうか・・・!もちろん今晩の宿は確保しますので」
「お気持ちは判りますが彼女はクリスタルを取り戻す為に先を急ぐ身。
 モンスター退治なら、国の護衛団や傭兵を雇う方が賢明かと・・・」

すかさず慌てふためいて喋れないミノリゴのフォローをするヒビキ。

「護衛団には救援要請を出しましたが・・・勇者様に退治して頂く方が断然早いかと・・・。
 村人の不安ももうピークです・・・どうか・・・」
「で、でも・・・俺、急がなきゃだし・・・」

目の前でうるうると瞳を潤ませ懇願する老人にたじろぐミノリゴ。
こう言った時上手く逃げれれば良いのだがそうもいかず、大抵はヒビキに助けを求めるのだが・・・

「あの・・・僕で良ければ退治しますよ?
 こう見えても傭兵ですし・・・・代金はモンスターを退治した後でも構いませんので」

しまったぁ!と、ミノリゴは心の底から思った。
コナユキが護衛を引き受けてしまえば必然的に”勇者”である自分も退治に参加しなければいけない。
なるべくなら戦いたくなかったのに・・・。
ミノリゴは心底泣きそうになった。

「ほ、本当ですか!?良かった・・・!
 勇者様のお付きがそう言って下さるのならもう安心だ・・・!
 すぐに宿の方に連絡を入れますので少々お待ちください・・・!!」

そう言って村長は家を飛び出していった。
慌ててヒビキが

「あ、あの彼女が勇者と言う事は隠しておいてください。事が公になると色々動きづらいですから」

と、付け加え。
村長はこくこくと首を縦に振って何処かに走り去って行ってしまった。

ふぅー、と緊張がほぐれたように息を吐くヒビキ。

「コナユキ・・・いくら放って置けないからと言っても”勇者護衛”の事、忘れてませんか?」
「ご、ごめん・・・つい・・」

コナユキとしては困っている人を助ける事は長年染みついた癖みたいなものなのだろう。
後で気が付いたかのように深く反省し、肩を落としているコナユキ。
まぁ、引き受けてしまったものは仕方ないですねと苦笑いのヒビキ。

「・・・そういえば、ミノリゴがあの選ばれた勇者だったんだね。
 全然わからなかったよ、教えてくれても良かったのに」
「あ・・・・あはははは・・・」

コナユキの無垢な問いにミノリゴは笑う事しか出来なかった。


(ああ・・・モンスター退治だなんて・・・俺が退治されなきゃいいけど・・・)

ミノリゴの頭の中は今、それを考えるだけで精一杯だった。



TO BE CONTINUED