ある世界のある国に
世界の秩序を保つと言われ、国の守護石として
その国を守り続けている石があった。

風の国は風の守護石を、火の国は火の守護石を。
水の国は水の守護石、土の国は土の守護石。

それのうち一つでも欠けてしまったら
秩序は崩壊し、世界は破滅の道へと進むだろう・・・。



「序章」


それは、一陣の風のごとく現れた。

「貴様、何者だ!?ここを何処だと思っている!!?」

気配を察した憲兵がばっと身構える。

「風の王国、守護石の間でしょ〜?そのくらい知ってるよ〜。
 ・・・邪魔だからちょっと黙っててね」
「――――ぐわぁぁぁっ!!」

守護石の間の前の廊下に断末魔が響き渡った。
うるさいなぁと、しかめ面をしながら侵入者はさっきまで扉を守っていた憲兵の
身体を避けるように扉の前に立った。
扉を開けようと押してみたが・・・びくともしない。

「ふぅん、一応封印も施してあるのかぁ。人間のくせにやるね」

手首をぶらぶらと振ると、侵入者は目をつぶり、両手で印を結び、何やら呪文を唱えだした。
その言葉は人間のものではなく、魔族のものだった。

「封印解除!!」

そう叫ぶと侵入者は閉じていた目をかっと見開き、結んだ印を扉に押し付けた。
バチッと大きな火花が扉全体を駆け巡り、封印が解けてしまった。

「やれやれ、結構骨が折れるなぁ。部下にやらせればよかった〜。まぁいいけど」

今度は首をゴキゴキ鳴らし、封印の解かれた扉をゆっくりと開ける。
扉の先には、人の大きさほどもある半透明の薄緑した巨大な石があった。
室内というのに突風がその石を守っているかのように吹き荒れていた。

「小賢しい〜。こんな風でアタシを食い止められると思ってるの?」

侵入者は突風などものともせず真っ直ぐ石の方に向かって歩く。
そしてその石の前で止まり、手を触れようとしたその時だった。

「その石に触れてはいかん!この世の秩序が崩れてしまう!!」
「ん〜?」

はっきりとした迫力のある声が部屋の外から聞こえた。
そこには、厳格な物腰の初老の男性が立っていた。頭には見事な装飾の冠が乗っている。

「これはこれは・・・風王様〜。こんな所に一人で来て良いの〜?
 あんた、一国の王様でしょ?」

声のした方に振り向き、侵入者は知り合いにでも会ったような口ぶりで話す。

「国の一大事を玉座に座ってボーっとしてるわけにはいかぬ。
 さぁ、守護石から離れろ。そして元居た場所に帰るが良い
 ・・・・・・大魔王ワラよ!!!!」

王の威厳というのだろうか、風王は侵入者に臆することなくきっと睨みつけ
持っていた剣を侵入者に向けた。
大魔王ワラと呼ばれた侵入者は不敵の笑みをなくすことなく見下すように風王を見、そしてこう言った。

「いやだね。こんな綺麗なもの、このアタシが放っておくわけないじゃないのさ〜。
 この世界の秩序が乱れるって言うのなら、ついでに世界もアタシのものにしてあげるよ」

風王の忠告も聞かず、ワラは守護石に触れ、持ち上げた。
ぶわっとそれまで石の周りを覆っていた突風はワラが持ち上げた瞬間消え去った。

「ま、待て!」

笑顔で守護石を抱えたワラに風王は剣を振りかざし、飛び掛った。
が、いとも簡単にその攻撃はかわされてしまった。

「ぐぅっ!!!」

支えを失った風王は激しく地面に叩きけられる。

「危ないなぁ〜。年なんだから無茶は駄目だよ。じゃ、貰っていくね〜」

やれやれ、といった感じに服のほこりを払うと
入ってきた扉から丁寧に出て行き、魔法でも使ったのか一瞬のうちに消えてしまった。


静かになった部屋には風の残り香と、呆然と立ち尽くす風王だけが残った・・・。





TO BE CONTINUED